【スケッチブック】キリシタン南蛮餅

12月　横浜そごうにて

きょうはおじいちゃんとおかいもの、なんでもすきなものかってくれるんだって

「ところでおじいちゃん、クリスマスってなんのひかしってる？」「ええと、ざびえーるだか誰かの誕生日じゃ云うて切支丹の若人がお経唱える日じゃなかったかの」

「だめね、ぜんぜんちがうわよおじいちゃん、クリスマスにはね、サンタのおじさんがせかいじゅうのこどもたちにプレゼントをくれるひなのよ」「ああ、そうじゃったそうじゃった、じゃが三太さんももう腰が悪いと云うとったからに大丈夫かのう」「だいじょうぶだよ、だってそらとぶそりがあるもの」「そうかい、三太さんとこのぽんが買うた車は空も飛べるんか、すごい世の中じゃわい、どうりで月賦がしんどい云うとったわけじゃ」

「みてみて！エンジェル・ブルーのふくよ！いますごくはやってるの、わたしもきたいなぁ！」 「何?円十朗武具とな？ 女の子はそんなちゃんばらみたいなことしちゃいかん」

「時にそれはこの間云うとった『呆け者』（ほうけもん ）とは違うんかの? 『ひょっとこ染五郎』もほしいんじゃろ。よしよし、 おじいちゃんが買うてやろ」

「だから『ひょっとこ』じゃなくて 『とっとこ」だっていってるでしょう」 「ああそうじゃったそうじゃった、 『捕っとこ犯科帳』じゃったな」 「ハムたろうだよおじいちゃん…」 「なんと、こんなに高いんか」っていいながら おじいちゃんとってもうれしそうなの、 もしかしておじいちゃんって おくまんちょうじゃなのかしら?へんなの。

「ありがとうおじいちゃん！ こんなにいっぱいうれしいな！ わたしがおとなになったらおじいちゃんに なんでもすきなものかってあげるね！」 「そうかそうか、そりゃ楽しみじゃわい」

「わたしがけっこんしたらだんなさまが おじいちゃんのすきなしょうぎのあいてしてくれるわよ わたしのだんなさまだもん、きっとつよいわ」 「そうかそうか、そりゃ楽しみじゃわい」

「わたしにあかちゃんができたら おじいちゃんのおひざでだっこしてあげてね、 おじいちゃんのおひざってあったかいんだ」 「そうかそうか、そりゃ楽しみじゃわい」

「わたしがおばあちゃんになったら おじいちゃんのみみかきしてあげるね」 「そうかそうか、そりゃ楽しみじゃわい」

「どうしたの?おじいちゃん? おなかでもいたいの?」 「いいや、なんでもないんじゃよ」