マツコラム

ソウルばっか!とNAOTOのメッセージ ~露西亜より愛を込めて~Side Story #1

ショックだった。そして混乱と困惑をかかえて僕は帰路に付いていた。
9/22 ソウルばっか!のリハーサルの帰り道、僕は少し弱気になっていた、聴いて楽しいのとショーとして披露するのは別物だった。確実なテクニックに裏打ちされた圧倒的なパフォーマンス、周囲の人の血を一瞬で沸騰させるような魂のシャウト、これがソウルか、この音楽がSOUL(魂)と呼ばれる所以がいまさらながらわかったような気がした。
僕は彼の言葉を思い出していた、NAOTO。タシケントの空港で偶然出逢ったアーティスト、今思えばそれは何か運命的なサインだったかのようだ。僕達はライブのためにモスクワへ向かう途中、彼は自分探しの旅の途中、気の重い密室での4時間のトランジットの時間はにわかに宴会場に変わった。
「ライブやりたいっすよー」彼の言葉は強かった、その言葉の重み、僕は少し薄れていたのかもしれない、自分が好きな音楽を作って発表できる場があると言うことはとても恵まれているのだ、なぜアーティストは音楽を作り、発表したいと思うのか、そしてまたなぜオーディエンスはその姿を見たいと望むのか。彼のCDを聞かせてもらう、まずジャケットに驚いた、目の前にいるNAOTOは飾らない純朴な旅人、しかしジャケットに写ったNAOTOは眩しいオーラを放つエンターテイナーの姿だった、きらびやかな衣装、長いドレッド、龍のごとく口を開き咆哮している姿、そして、歌、すごい。一瞬目の前の純朴な旅人に目を疑った。しかも彼の実力はヴォーカリストとしてだけではなくコンポーザーとしてそのサウンドメイキングにも息を飲むものがあった、こんな実力者がなぜこんなところをフラフラしている?床に座り屈託なく笑う彼、いや、だからこそ、なのかもしれない。彼が自分探しの旅に出た理由、僕にも少し思い当たることがある。彼も旅先の国でいてもたってもいられなくなりライブハウスに飛び入りで歌ったりしているという、つい数カ月前の僕のオーストラリアでの思い出とダブる、ライブやりてー、俺にもやらせろ!俺の音を聴け!その気持ちが爆発する時のパフォーマンス、それはSOULと呼んでいいのだろう。逆にその気持ちのないパフォーマンスなんて見てもきっとつまらないだろう、実力者NAOTOのSOULが爆発するパフォーマンス、見たい。あんなに苦痛だと思っていたトランジットの時間はあっという間に過ぎ僕らは別れ、再び違う空へと向かった。
9/26、ZEPP東京。自己顕示欲というアーティストの本質である本能、ここで弱気になってはダメだ、自分を奮い立たせて会場へ入る。今日のアクトは自分史上最もショッキングなものだ、最高に贅沢なSPANK A FUNKとの共演、そしてなんとバックダンサー!電撃チョモランマ隊のメンバーを率いてセンターでギターヴォーカル!はっきりいってビビる、でも今思うべきは「なんだか申し訳ない」ではなく「こんなにすごいぞ!」なのだ、遠慮なんて美学はこの世界には必要無い。リハーサル、最高の音に迷いも吹き飛ぶ、ドラム、ベース、ギターに加えてキーボードとホーンセクション、SOULを熟知した彼等のアレンジはやはり秀逸だ、ファンキーであることとクレバーであること、英語で言うクールとはこういうことを言うのだろう、そして電撃チョモランマ隊のダンス、これはすごい、言葉にすれば当然のことなのだが180cmはあろうかという大人の男の体が物凄いスピードで動くのだ、間近で見ると凄い迫力である、人間ってこんなに動けるんだ!というのが率直な感想。よし、行ける!あとはこの興奮に酔えばいいだけだ。
そして本番、ここでまた僕は打ちのめされることになる、みんな凄い衣装だ!そしてすごいアフロだ!SOUL=アフロ&ギラギラ衣装となんとなく短絡的にファッション化して見ていたのだがいや、違う、ここからもう本気のエンターテイメントなのだ、それぞれが自分の溢れ出るSOULを衣装や髪型といったキャンパスに表現する「芸術」、歌だけ良ければ良し、それだけじゃ自分は語れないぜ!という迫力が伝わる。そしてひとたび音がなればもう止まらない、叫ぶ!煽る!吠える!魂が躍動する!「ほとばしる」という言葉がぴったりかもしれない、全身から溢れ出る歌、この音楽は本当に「SOUL」だ、「魂の解放」その姿に人は惹き付けられるのだろう、歌え!踊れ!叫べ!突き動かし、突き動かされヒートアップする会場、人間はこの喜びを知っている、音楽と言うものが生まれた理由、その本来の姿がSOULなのかもしれない。そしてあっというまに僕の出番、脳内麻薬をコントロールする間もないままあっというまに終わっていた、良く覚えてないけど気持ちよかったことは覚えている、ボーっとしながら思い返していた、めくるめくSOULの世界、今回はその入り口を見たくらいで精一杯だった、俺の歌を聞け!そして踊れ!叫べ!そのテンション、僕はきっと知っているはずだ、心のどこかでまだ隠れている僕のSOUL、解放してやりたい、新たな野望を胸にミラーボールのようなお台場の夜景を後にした。彼ならどう吠えただろうか、旅人のことを思い出しながら。