覚えているものだ。何も不思議なことではない、まだたったの9ヶ月。それまで何年間も毎日のように弾いていた「王道」ブルームナンバーを取り揃えたメニュー、ブランクは感じない。いや、むしろ問題はブランクの間に「どれだけ自分が成長しているか?」なのだ。
良かった、成長している。それは安堵感にも似た気持ちだった。9ヶ月間、いろんなことを試してみた、いろんな方法、いろんな解釈。でもいつも付きまとっていた「本当に前へ進んでいるのだろうか?」という疑問。競う相手も計るものさしもない修行という旅の中では「どこまでいけば合格」といった基準は自分の中にしかない。不安はあった、ヘタになっている可能性だってあるのだ、そしてリハーサルが始まる。あの頃「この曲はこうだ!」と完成型だと思っていた曲達が不思議なことに今ではまるでまな板に乗った食材のように見える、しかも最高級の食材だ、まだ調理の余地はいくらでもあるんだな、いろんなアイデアやリアルタイムのアレンジが面白いようにキマる、ひさびさのホームグラウンドでヒートアップするのと同時に成長を実感できた自分にほっとしていた。そして相棒の歌も然り、一度離れてみることによってその本質が見えると言うのはバンドに限ったことではない、やはりいろんな人のサポートをやってみて正解だった、「今ならこう当てる」、歌の活かしかたというのも少しは分かってきたようだ、一つのバンドを長くやっていく意味、そしてフリーのミュージシャンとしていろんな人とセッションする楽しみ、贅沢だ、今はどっちも楽しめる。
不安は無い、これが「長年の勘」という安心感なのだろう、一人で立つステージではいまだに緊張が抜けない、どうにかその緊張や不安を払拭しようと試行錯誤をくり返したところで絶対的にくつがえせないものがある、「年季」だ、同時にそれは焦る必要もないんだなとも思えた、たかだか9ヶ月くらいで自分のパフォーマンスに絶対の自信がもてるようになってもそれはそれで無気味だ、揺るがない自信というのは長い時間と繰り返す経験の中で培われてゆくもの、Bluem of Youthとして立つ時の余裕、松ケ下宏之として立つ時の心細さ、なにも不思議なことでは無い、むしろ心細い今でしか得られない感覚を楽しんでやっていけばいい、このまま歩いて行けば松ケ下宏之としていずれ自信もついてしまうだろう、そうなったらなったでまた僕は一から始める楽しさをどこかに探すのかもしれない。
次回予告!
出発~タシケントでNAOTO君と遭遇!~ロシア到着~ロシアリハ~本番~モスクワ観光~バイカル湖~帰国 の中で書けたものから!順序が逆になる恐れあり!